本書は、日本語疑問文の典型的な姿である質問文を対象に、いくつかの文型の文法的な構造を明らかにし、文法構造がどのように疑問文の内容面と言語行為面をむすびつけているかを論じることを目的とする。また、本書の記述や分析を通して、統語的な観点で規定することのできない現代日本語の疑問文をどのように規定すべきかという問題について、日本語の実態に即した提案を行うことを目指す。その際、これまで現代日本語の文法論であまり意識されることのなかった「文の意味とも機能とも言いがたい、一種のニュアンスのような話し手の物腰」と「現代より古い時代の疑問文の様相を確認する史的観点」の2点について、必要に応じて言及しつつ進める。