[第一特集] 2025年版「税制改革の提言」
日本は、税による所得再分配機能が極めて弱いことが知られています。1983年以降、所得税の累進性や最高税率が大幅に引き下げられ、金融所得は分離して低率で課税する制度がとられているため、所得が1億円を超える階層では逆に税率が下がっていく「1億円の壁」が問題となっています。
2024年の総選挙では、所得税の「103万円の壁」問題などに注目が集まり、25年通常国会でも基礎控除や給与所得控除の引上げ幅について審議が続きます。この低い方の「壁」問題は本来、健康で文化的な最低限度の生活を営むための最低生活費(ナショナル・ミニマム)、つまり生活保護の水準まで大幅な引上げが必要で、そのためにも金融所得を含む所得税・法人税等の見直しがセットで議論されるべきです。今年は特別寄稿として、日本が直面する深刻な社会問題である高等教育費と奨学金の問題、防衛費が膨張する国家予算の問題についても、それぞれ論じていただきました。今こそ、基本的人権を保障するための応能負担の税制改革が求められています。
[第二特集] 公務労働者と春闘
2024年の実質賃金(厚生労働省「毎月勤労統計調査」2月5日発表の速報値)は3年連続のマイナス。実質賃金が統計で遡れる35年間で過去最低を記録しています。物価高騰に賃上げが追いつかず、労働者の生活悪化が続いています。ILO(国際労働機関)による各国2024年の労働分配率を見ると、日本はG7で突出して低い53.7%で、トップのドイツの61%より12%も低くなっています(日本経済新聞2月2日付)。一方、大企業は経常利益・配当金・内部留保が過去最高を記録し、史上空前の大儲けをあげています。こうした中、第二特集では、公務労働者が専門性を活かして「ビクトリーマップ」運動(大企業の内部留保をほんのわずか取り崩すだけですべての労働者の大幅賃上げが可能)などで2025年春闘に結集する意味(笠松論考)やストライキを構えての賃金闘争の重要性(前園論考)、韓国と対比しながら日本の労使関係を問う(呉論考)ことで、「公務労働者と春闘」について考えます。