次世代と地域をつなぐグローカル考古学への挑戦!
現在、土偶や史跡などの個々のモノに焦点を当てた出版物は多数あるが、大学が所蔵するコレクションという集合体と、地域に根ざした独創的かつ学際的な研究資源を融合させた考古学の本はみかけない。本書は、「地方」史の枠を超え、地域の考古学研究が歴史の見方をどのように変え、さらにどのように変わり続けるのかを探る。
前半では、大学が所蔵する貴重なコレクションと、これまで調査してきた遺跡を紹介する。先人たちの研究に対する挑戦や視点を振り返ることで、弘前大学の考古学研究が地域に果たしてきた重要な役割を知ることが出来るだろう。後半では、現在と未来の研究に焦点を当て、地域に根差した大学ならではの学際的かつ創造的な研究を紹介する。地理学、民具学、地学、文化財科学、分子化学、農学など多様な分野からのアプローチに加え、災害や気候変動、地域活性化といった地域発の世界的課題に挑む研究の姿を描く。
最先端の分析技術の紹介にとどまらず、遺物や遺跡そのものが持つ美的な価値を豊富なグラフィックで紹介し、その歴史的価値にも深く迫っている。新しい考古学の世界を是非楽しんでいただきたい。
〈担当編集者コメント〉
2021年に北海道・北東北の縄文遺跡群が世界文化遺産に登録されて以降、この地域の考古学に対して関心を持つようになった人も多いと思います。とは言っても、弘前大学が、本書で紹介されているような貴重なコレクションを所蔵し、また、長きにわたって地域の遺跡の調査を行ってきたということは、あまり知られてはいないのではないでしょうか。かくいう私も、『地域からの考古学』の編集に携わり、初めて、弘前大学の考古学研究がいかに地域に密着し、青森県全体の考古学研究を牽引してきたかを知りました。同時に、青森県内に、これほど多くの遺跡があり、そのいずれもが、太古の人々の生活の営みを現在に伝える貴重な資料となっているということにも感銘を受けました。
本書には、考古学研究の詳細な内容や遺跡についての説明だけでなく、遺跡や遺物の美しさを伝える写真資料も数多く掲載されています。現代社会では知り得ない、はるか昔の青森の人々の暮らしに、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。北日本の考古学愛好家や研究者だけでなく、学生、これから考古学を学びたい方、大学の考古学教育と研究を知りたい方などにもお勧めしたい一冊です。書店に並んでいたら目を留めずにはいられない美しい一冊に、是非手を伸ばしてみてください。
◆全ページカラー(口絵19ページ含む)