人はこの世界の支配者だと思っている。
だから人を凌駕する「人でない何か」に脅威を覚える。昨今のAIもそうだ。
一方で古来から、鶴の恩返しのような動物報恩譚、異類婚姻譚の逸話も数多く語られてきた。
そこにはもしかしたら、人を凌駕するものへの恐怖を手なづけたいという思い、
または、人は愚かな存在であると知らしめる教訓があるのかもしれない。
そう、人でないもの、「人でなし」によって、人は自らの傲慢さ、隠された本性を自省することになる。
そして、そのような存在としての「人でなし」は、ときに人と区別のつかない存在として社会に紛れ込む。
影の存在、人の類似物=シミュラークルとしての「人でなし」。
それはどのように人や社会の裏側を垣間見せてきたのか、さまざまな側面から見回してみたい。
★特集以外にも、書評、映画評、舞台評、展覧会紹介、エッセイなど満載です!
▼主な内容
◎巻頭ヴィジュアル/田中流ほか「ニンギョウモドキ」・村上仁美・清水真理・FREAKS CIRCUS・村田兼一・映画「動物界」・ストロベリーソングオーケストラ 他
◎人でなしのススメ●八本正幸
◎夢見るAIロボット、または人間のあいまいな欲望〜「鉄腕アトム」「A.I.」から初音ミク、「her/世界でひとつの彼女」まで●浦野玲子
◎アンドロイドは魂の夢を見るか?●鈴木一也
◎超人、ロボット、ユートピア、優生思想〜貴司山治と1920年代シミュラークル●高槻真樹
◎マネキン映画からラブドール映画、「空気人形」まで●浅尾典彦
◎蠱惑と哀しみに彩られた草花の幻想奇譚●馬場紀衣
◎日本で伝承されてきた鬼の正体とは●橋本純
◎人面獣心の証明〜狐・狸・貉・そして…●阿澄森羅
◎水木しげるのマジックリアリズム●本橋牛乳
◎似我蜂(ジガバチ)に育てられる青虫〜佐藤史生「塵の天使」に寄す●宮野由梨香
◎スケープゴートとしての変身ヒーロー〜『仮面ライダー龍騎』●壱岐津礼
◎ゆかいな隣人たち〜藤子・F・不二雄の生んだふしぎなキャラの数々●日原雄一
◎自分のコピーを前にしても「自分」であるために●水波流
◎半身半蛇のラミアに仮託して語り継がれた恐怖●相良つつじ
◎人間以上のものになる強い願望の実践者たち〜加速する全身身体改造●ケロッピー前田
◎REVIEW=本広克行監督「亜人」、松岡佳世「ハンス・ベルメール〜身体イメージの解剖学」、エリック・ガルシア「さらば、愛しき鉤爪」、室井光広「おどるでく〜猫又伝奇集」他
◎TH RECOMMENDATION=「ヴェネチア・ビエンナーレ2024」レポート他