現代日本語の否定的評価を表すとりたて詞(など・なんか)を中心に、その形態・統語的特徴と意味的特徴を記述的に一般化する。先行文脈との意味的な関係性の違いが、その文法的振る舞いに本質的な影響を与えていることを主張する。
■序章より
本書の目的は、現代日本語のとりたて詞、とりわけ否定的評価を表すとりたて詞を中心に、その形態・統語的特徴と意味的特徴を記述的に一般化することにある。本書で扱う否定的評価を表すとりたて詞とは、(1)や(2)のナンカのようなとりたて詞である。
(1)どうやら花子は、研究者ナンカに憧れて、一生懸命勉強しているらしい。
(2)砂糖入りの緑茶ナンカ絶対おいしくないよ。
否定的評価を表すとりたて詞が示す現象を改めて観察してみると、日本語のとりたて詞全体の体系に関わる重要な観点だけでなく、ことばの「含み」と認識主体(多くの場合は話者)の態度という、ときに構造的に扱うことが困難となる部分について、新たな分析の観点が提供できる。これらの観点に基づいてとりたて詞の現象を記述的に一般化することは、日本語の記述的研究はもちろんのこと、さまざまな理論的枠組みに基づいて行われる研究にとっても重要な分析の土台を提供することにつながると考えられる。