「楽しく遊んだ」は言えるのに「面白く遊んだ」はなぜ不自然に感じられるのか。「どのような場合にどのような形容詞が、連用形でふるまえるのか」という問いのもと具体的な事例をあげ現代日本語における形容詞の連用用法を記述する。
庵功雄「まえがき」より
(1)は日本語として全く問題ありません。しかし、(2)はどうでしょうか。なんとなく不自然な感じがするのではないでしょうか。
(1) 昨日は友達と遊んで面白かったです。
(2) ?昨日は友達と面白く遊びました。
本書はこうした日本語学習者の産出例を見て永谷さんが抱いた違和感が出発点となっています。(2)の「面白く」は形容詞の連用形ですが、形容詞の連用形が常に使いにくいとは言えず、(3)は自然に使えます。
(3) 私は彼女が乗った車を寂しく見送った。
形容詞連用形が示すこうした振舞いの違いを形容詞の意味的・統語的タイプの違いから包括的に説明したのが、本書の最も重要な成果です。
(中略)
本書の分析は上質の記述文法の方法論を味わわせてくれる内容になっていますが、永谷さんがこうしたストーリーに行き着くまでには様々な試行錯誤があったことと思います。ゼミや面談の場で、わずかながらその現場に立ち会えた者として、今回こうした形で本書がまとめられたことに感慨を覚えます。