本書は五月に一挙に六冊文庫化された松下幸之助の「心得帖シリーズ」の四作目である。他の五冊が商売と経営をテーマにした作品であるのに対して、本書は表題どおり、人生についての考えを述べたものであり、その人生論はまさに松下自身の体験と鋭い洞察から得た“生き方の智恵”“人生の指針”といってよい。▼たとえば、「病とつきあう」という項がある。そこで松下は、病から逃げてはいけない、病を恐れて遠ざけていると、病は後から追いかけてくる。反対に、病を味わい病と仲よくすれば、最後には病のほうから卒業証書をくれる、という。▼実際、松下はもともと体が弱く、二十歳の頃に肺尖カタルを患い、三日働き一日休むというような生活をしていた。その後、体の調子と相談しつつ仕事を続け、結局、九十を超える人生を送った。▼人間としての成功とは何か、悩みはどう解消すべきか、生きがいとは何か……。人生の達人・松下の言葉には時代を超えた説得力がある。