本年度直木賞を受賞した作家、宮部みゆき。そして中村隆資、鳴海丈、火坂雅志、安部龍太郎、宮本昌孝、東郷隆の時代小説の若き旗手7人が、一振りの剣の繰り広げる数奇なドラマを時代ごとに書き継ぐリレー小説。 鎌倉末期、備後長船で生まれた剛刀「のきばしら」。室町時代、足利将軍惨殺という嘉吉の乱を引き起こし、切腹を迫られた茶人・千利休の手により石灯籠を斬る。やがて江戸時代、転生した娘とともに質屋夫婦の命を救う。幕末には“人斬り”岡田以蔵の手に渡り、維新動乱のなかで女剣士の仇を討ち、ついに、終戦前夜の皇居に現れる……。 リレー小説は、最近ではあまり見かけないが、作家たちの卓抜たる個性をぶつけ合い、壮大なドラマを生み出すために、意欲的にこの形式に挑戦。鎌倉時代の刀の誕生から昭和の動乱期まで日本の歴史を縦断し、物語のバリエーションに富んだ作品に完成した。時代小説ファンならずとも垂涎の一冊である。 解説・縄田一男。