本書は、鹿児島の観光・交通産業を支える岩崎産業株式会社代表取締役社長の岩崎芳太郎氏が、日本の現状と将来について鋭い洞察を展開する渾身の一冊である。
著者は、コロナ禍で露呈した政策決定プロセスの不透明性や、検証なき施策の連続、そして責任の所在が曖昧にされる現状を厳しく指摘する。
本書の核心は、「経世済民」の精神に基づく国家経営の必要性を説くことにある。著者は、予算審議を偏重し決算を軽視する国会の姿勢や、グローバリズムと新自由主義の波に翻弄される日本の現状を批判的に検証。さらに郵政民営化や構造改革が日本社会にもたらした影響を詳細に分析し、その功罪を明らかにしている。
著者は、これらの問題の根底に、日本人の思考力の劣化があると指摘。カタカナ語の氾濫や、概念の咀嚼なき言葉の使用が、社会の思考力低下を加速させていると警鐘を鳴らしている。
しかしながら、単なる現状批判に終始するのではなく、日本再生への道筋も示している。著者は、多様な視点と思考力の必要性を説き、日本人が本来持つ強みを活かした産業育成の重要性を強調。さらに国家をマネジメントする視点の必要性を訴え、真の民主主義のための高度な議論能力の育成を提言している。
著者の豊富な経験と鋭い洞察に基づく本書は、混迷する日本の現状を打破し、真の日本再生への道を模索する全ての人々にとって、貴重な指針となるだろう。政治家、経営者、そして一般市民まで、幅広い読者に深い示唆を与える一冊である。