没後28年なお不動の人気を誇る国民的漫画、アニメの「サザエさん」。だが、この、15歳で天才少女としてデビューし、72歳で亡くなる5年前まで描き続けた作者・長谷川町子とその家族のことは意外なほど知られていない。戦後の荒廃から日本が怒濤【どとう】の成長を遂げた時期に『サザエさん』の出版を家業・姉妹社として立ち上げた一家は、磯野【いその】家の人々とはおよそ真逆の愛憎、かけひき、確執が充満する空間を生きる。度肝を抜く額の収入、家族の不和と崩壊、自伝に書かれた虚ーーこれらをひた隠した長谷川家の三姉妹の、苛烈な人生の光と闇を描いた評伝。