なぜ四方位は人類史の指標だったのか?
自分が世界のどこにいるのか
自分は何者なのか
古代からの人類の文化と想像力
オンライン地図アプリで位置感覚をなくしたとき、人はどんな代償を払うことになるだろうか?
四方位は単なる方角ではない――世界中のあらゆる社会において、宇宙観や倫理観、宗教生活や政治経済の基盤となっている。それらは祈るべき方角や礼拝の場所と建物の向きを定めるのに用いられる。世界を地政学的に整理し、分割する際にも影響力を持つ。その結果、それらの語は、わたしたち自身が何者であるかについての思い込みや信念にまで影響をおよぼすようになる。主要方位の四つすべてにまつわる想像的な側面こそが、ここで披露する物語には科学的、地理的、歴史的側面だけでなく、フィクションや詩の要素を含んでいることを示している。 ―――本書「オリエンテーション」より
なぜ人間には四方位が必要なのだろうか。
極点、赤道、子午線、そして四方位は人間の想像上の産物である。
わたしたちは自然界への方向性を見失いつつある。この多極化と混乱に満ちた世界で、次に舵を取るべき方位はどれだろう?
人類史上、方位は、自分が世界のどこにいるか、そして自分が何者なのかを示す指標になってきた。
方位は、太陽の動きのような天然自然のものでありながら、実際には人が作り出した文化そのものである。
世界中のほぼすべての社会に存在しながら、わたしたちがそこにいてどの言語を使うかによって、まったく正反対の意味を持つこともありうる。
どの言語においても、方角を示すために使う言葉は、文脈や地理的条件がきわめて重要で、どんな状況で使われたかがすべてなのだ。
今日では、モバイル機器が空間の案内役だ。東西南北など関係なく、オンラインの地図アプリがその瞬間の自分の位置を教えてくれる。自分の位置感覚を失くしたとき、人はどんな代償を支払うことになるのだろうか?
―――本書「オリエンテーション」「第5章 青い点」より