東漢(やまとのあや)氏、秦(はた)氏をはじめ、多くの「渡来人」が、高度な知識や技術といった先進の大陸文化を日本にもたらし、ヤマト政権で活躍したとされている古墳時代。しかし最新の科学的研究では、古墳時代に日本に住む人びとのうち、何と「25%」もの人びとが朝鮮半島を経由してやってきた移住者であったことが明らかになりました。このことは、はたして何を意味するのでしょうか?
また、縄文時代、すでに多数の移住者が日本にやってきており、大きな衝突もなく「日本人」が形成されていました。そしてヤマト政権が確立される古墳時代にも大きな移住の波があり、その大半は平凡な農民などで、日本社会に吸収されていきました。
こうした歴史をふまえると、従来、歴史教科書で学んだ「渡来人」をとりまくイメージは一変してしまいます。
本書は、「渡来人」を軸に日本と大陸の関係をていねいにひもときながら、『日本書紀』などに記された伝説的要素と史実を可能なかぎり分け、従来「渡来人」と呼ばれた人びとや「渡来系」を自称する豪族の素性、渡来時期、ヤマト政権での足跡を明らかにしていきます。実像と虚像がないまぜになった「渡来人」をめぐる古代史の輪郭を、はっきりと浮き彫りにしていきます。
著者の武光誠氏は、「神道」「仏教」「日本神話」「陰陽道」など、現代の日本人の精神に深くかかわる思想や信仰を、わかりやすく解説することで定評があり、数多くの本を世に送り出してきました。本書では、「渡来人」の科学的新事実から、その後の足取りをつぶさに追っていくことで、日本人と「渡来人」が日本文化に与えた影響を捉えなおします。
序章 古墳時代に日本列島に渡った膨大な数の移住者とは
第一章 渡来系豪族を「渡来人」と総称すれば、歴史を見誤る
第二章 「渡来人」の時代以前の中国、朝鮮半島、日本
第三章 四世紀に、ヤマト政権と加耶の交流が始まった
第四章 東漢氏と結んだ蘇我氏はいかに勢力を拡大したか
第五章 聖徳太子と天智天皇に仕え、東漢氏を超えようとした秦氏
第六章 船氏、西文氏、鞍作氏…独自の動きをとる渡来系豪族
終章 早くから日本に同化した「渡来人」の栄枯盛衰