色男丹次郎をめぐり許嫁と芸者が繰り広げる恋と笑いと人情の万華鏡。当時の女性読者を熱中させた為永春水の人情本を漫画化。
『春色梅児誉美』は為永春水(寛政二天保一四[西暦一七九〇一八四三]年)の手になる人情本で、刊行は天保三四(一八三二三三)年。四編一二冊。鎌倉恋ヶ窪(新吉原)の遊女屋唐琴屋の養子で色男の丹次郎をめぐり、許嫁と女芸者が繰り広げる恋の意気地と達引を描く。写実的に描かれた江戸下町の自然風俗を背景に、会話を主とした場面を次々と積み重ねてゆく物語構成、抒情的で濃厚な男女交情の描写により大衆をおおいに惹きつけた。また、自らの意志で行動する作中の女性たちは、若い女性読者の羨望と共感を呼び、女性の生き方を描いた最初の江戸小説と評されている。
この作品を刊行した後、春水は『春色辰巳園』『春色恵の花』『春色英対暖語』『春色梅美婦禰』と続編を書き継ぎ、天保一二(一八四一)年に「梅児誉美」シリーズは完結した。