『平家物語』は、冒頭に置かれた「諸行無常」「盛者必衰」の言葉が示すとおり、無常観を主題に平家一門の栄枯盛衰を描いた軍記物語の最高傑作である。また、琵琶法師の語りを通して広く庶民に迎えられたことから、語り物文学の一傑作とも評される。作者・成立年不詳。扱う時代は、平忠盛昇殿からその玄孫六代の処刑までの七〇年に及ぶが、中心となるのは、仁安二(西暦一一六七)年に清盛が太政大臣に任じられ栄華の絶頂を極めたときから、平家一門が壇ノ浦で滅亡するまでの約二〇年間である。本全集では、清盛昇進の過程を明らかにするため、原典では略されている保元・平治の乱にも多く頁を割いた。上巻では平家の台頭から以仁親王による平氏追討の令旨発令までを描く。
〈目次より〉
平家の台頭/我が世の春/御輿振り/陰謀発覚/法皇幽閉/大乱の前兆