戦国時代末期、九州では島津勢が猛威を振るっていた。肥後の一豪族・木山弾正の居城にも島津の大軍が押し寄せる。城を枕に討ち死にか、それとも軍門に下ってしまうか。だが弾正は決意する。選んだ道は、敵の包囲網を突破して、義兄のいる天草へ落ち延びることだった。無事脱出に成功した弾正だが、時代はさらに変転する。弾正は九州の新たな支配者、太閤秀吉の奮う権勢にどう対峙するのか? 傑作戦国時代小説。
逃げない、退かない。矢野隆の描く熱い漢(おとこ)を見て欲しい。葉室麟
武勲か愛か。闘将・加藤清正に挑んだ勇者がいた。
安土桃山時代末期、九州では島津勢が猛威を振るい、大友や龍造寺を倒して、もはや敵なしという勢いだった。肥後の一豪族・木山弾正の居城にも島津の大軍がついに押し寄せてきた。城を枕に討ち死にか、それとも軍門に下って自らの生殺与奪の権を敵に委ねるか。だが弾正は決意する、どちらも選ばないことを。選んだ道はただひとつ。敵の包囲網を突破して、義兄のいる天草へ落ち延びることだった。弾正には父祖伝来の土地や武士の意地を守るために、妻子や家臣を犠牲にすることができなかったのだ。無事脱出に成功した弾正は、その後、一介の客将として天草に逼塞する。そして、時代はさらに変転、九州の新たな支配者には太閤秀吉が君臨し、肥後の国主として半国ずつ小西行長と加藤清正が任じられる。安寧の地を勝ち得たに見えた弾正に、またしても予期せぬ転機が訪れようとしていた──。