無邪気な子どものふりはもうできない。
12歳。大人の途中の子ども。
悲しく切なくやりきれないような痛みだって知っている。
12歳をとおりすぎるすべての人たちへおくる、第42回講談社児童文学新人賞受賞作品。
家の机のカギがかかる2番目の引き出しには、直人先生の写真がひっそりとすみれ色の封筒に入っている。修学旅行先の日光から帰る電車のなかで、直人先生の隣に座っていたムコーヤマを撮るふりをして、眠っている直人先生をこっそりと盗み撮りしたのだ。その写真のことは誰にも言ってないし、もちろんだれにも見せてない。――(本文より)