第二次世界大戦後の泥沼から理想を掲げて這い上がり、いまや世界最強国家の1つともいわれるようになったドイツ。しかし、じつはその実情はといえば、理想主義に足をとられてエネルギー・難民政策に失敗し、EUでもオーストリアのクルツ首相はじめ、「反ドイツ」の動きが止まらない……。
そして、盤石だと思われていたアンゲラ・メルケル政権は、2017年の総選挙で実質的には敗北を喫し、右派政党AfD(ドイツのための選択肢)が第三党へと躍り出た。あの「民主主義の優等生」が、いつの間にかこうした混乱に陥っていたことを、ご存じだろうか。
「理想のない政治はよくないが、政治が理想に支配されてしまうと、国家は破綻する」。ドイツ在住三十余年、その内実を現場から見つめつづけた川口氏は、そう語る。
ドイツがその理想を託すEUは、このまま空中分解してしまうのか? 日本で報じられないドイツメディアの日本・中国評から、「自由」と「規制」の関係までを深く考察した、どうしてもいま日本人に伝えたい「理想」「自由」「国家」の本質。
〈内容例〉
「言論の自由を守る」とされたSNS規制法案/ドイツの歴史は真っ二つに分断されている/なぜドイツはEUを絶対に手放さないのか/無名のメルケルを大抜擢したコール首相/ドイツと中国との絆が深まった歴史的な理由/中国市場に標的を絞ったドイツ車メーカー/突然、中国批判に転じたドイツメディアの真意/中国の「一帯一路」はドイツまでつながっている/「脱原発合意」を二度ひっくり返したメルケル/このまま行けば消費者の電気代は天井知らずに/鶴の一声で反故にされたシェンゲン協定/彗星のように現れたオーストリアの貴公子・クルツ/マクロンは「メルケルお母ちゃん」の手には乗らない/反AfDの立場を隠さなかったテレビキャスター/連立交渉の破綻を恐れて妥協案に逃げたメルケル/なぜFDP党首は絶望し、交渉を切り上げたのか/まもなく、メルケルの時代が終わろうとしている/規制法施行後、民衆扇動罪で起訴されたAfD議員/民主主義を守るための言論統制は正しいのか ……ほか