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第2回 書店員が選ぶノンフィクション大賞2024 授賞式レポート

「第2回書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞された三宅 香帆(みやけ かほ)さんの授賞式を、2024年11月13日金曜日、ジュンク堂書店 池袋本店で開催いたしました。

第2回 書店員が選ぶノンフィクション大賞 大賞受賞作品

なぜ働いていると本が読めなくなるのか
なぜ働いていると本が読めなくなるのか

なぜ働いていると本が読めなくなるのか

著者
    三宅 香帆

集英社

¥1,000
【人類の永遠の悩みに挑む!】
「大人になってから、読書を楽しめなくなった」「仕事に追われて、趣味が楽しめない」「疲れていると、スマホを見て時間をつぶしてしまう」……そのような悩みを抱えている人は少なくないのではないか。
「仕事と趣味が両立できない」という苦しみは、いかにして生まれたのか。
自らも兼業での執筆活動をおこなってきた著者が、労働と読書の歴史をひもとき、日本人の「仕事と読書」のあり方の変遷を辿る。
そこから明らかになる、日本の労働の問題点とは?
すべての本好き・趣味人に向けた渾身の作。

【目次】
まえがき 本が読めなかったから、会社をやめました
序章 労働と読書は両立しない?
第一章 労働を煽る自己啓発書の誕生―明治時代
第二章 「教養」が隔てたサラリーマン階級と労働者階級―大正時代
第三章 戦前サラリーマンはなぜ「円本」を買ったのか?―昭和戦前・戦中
第四章 「ビジネスマン」に読まれたベストセラー―1950~60年代
第五章 司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン―1970年代
第六章 女たちのカルチャーセンターとミリオンセラー―1980年代
第七章 行動と経済の時代への転換点―1990年代
第八章 仕事がアイデンティティになる社会―2000年代
第九章 読書は人生の「ノイズ」なのか?―2010年代
最終章 「全身全霊」をやめませんか
あとがき 働きながら本を読むコツをお伝えします

【著者略歴】
三宅香帆(みやけかほ)
文芸評論家。
1994年生まれ。
高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。
著作に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。
商品詳細
プロフィール

三宅 香帆(みやけ かほ)
文芸評論家。1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。著作に『ずっと幸せなら本なんて読まなかった―人生の悩み・苦しみに効く名作33』(幻冬舎新書)、 『「好き」を言語化する技術―推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、 『30日de源氏物語』(亜紀書房) 、『娘が母を殺すには?』 (PLANETS)など多数。

授賞コメント

三宅

この度<書店員が選ぶノンフィクション大賞>をいただいた『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、累計23万部となりました。賞をいただいたという経験がなかったので、書店員によって選考されたノンフィクション大賞をいただけたのは嬉しい。
大学生の時に著者デビューしたのですが、同時に書店でアルバイトもしていて、自分が書いた本はなかなか売れず、思わずレジからお客さんに『これは私が書いた本なんです』とアピールしました。
私は小さい頃、両親と買い物に出たときに両親からはぐれて行方不明になり警察沙汰になったことがあります。そのときはひとりで書店にずっといたのです。こんな小さな低学年の子が本屋にひとりでいるなんて両親は思うことはなく、結局本屋を探すことはありませんでした。それほど小さい時から本屋が好きだったようです。

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インタビュー|三宅さんへ、会場の記者から

    普段本を読まない人はノンフィクションというジャンルはすこし縁遠いように思えますが、どのような視点で本を選ぶと良いでしょうか?

三宅

働いていて文化的な趣味を楽しめないって結構大きな問題だと思いました。
社会人のほうがいろいろ仕事を通しての見聞があるため、ノンフィクションの本を楽しめると思います。今後、働いているひとにノンフィクションをどうやって届けるか、ということをやっていきたいです。

    受賞された本の最後の章で、全身全霊をやめませんか?とあります。日本のみならず世界的な傾向でもあると思われる「仕事を頑張りすぎる」ことについて、三宅さんなりのビジョンをお持ちですか?

三宅

全身全霊で仕事をしている中で、そうなってしまうのはなぜか?と考えると、やっぱりある意味日本の組織のありかた会社のあり方に深く関係しているんじゃなかと思っていて、今まで日本が働いてきた組織だったり共同体だったりというものがどうしても全身全霊じゃないと信頼されないんじゃないかとか、人間関係の中で、全身全霊の人のほうが信頼されやすい、みたいなことがあったんじゃないかと。
今後、日本の組織の有り方と全身全霊的なことを求めてしまう有り方というのがどのように関係しているのか、ということも書いていきたいと思います。

    仕事や学校以外で人と繋がれる場所は意外と少ないように思います。書店は一種、ひとと繋がれる所なのかなと、書店員の私は思っていますが……

三宅

読書会を私は主催しているのですが、読書会をやっていると、ぜんぜん違う立場のひとも、本の感想をしゃべるってことだったら、結構しゃべりやすかったりするんですよね。あんまり相手のパーソナルなことを聞くより、本の感想をしゃべったほうがみんな意外と自分をオープンにできるということがあります。
「どうやってひとと繋がれるか」ということは、今後の本のありかたに関わってくるんじゃないのかなと思います。

    ありがとうございました。

編集後記

三宅さんは年少の頃より本に大変親しみ、書店勤務も経験するなど、書物に親しんでこられた様子が伺えましたし、働いているひとへ向けた作品創作への意欲を示されました。
また、三宅さんのYouTube企画として、「本を全国の書店で買いたくなる動画」が企画されています。三宅さんが全国の書店を訪れて書店の紹介をしながら、本を買いまくるという企画です。
なぜ『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は売れたのか?祝ノンフィクション大賞!【書店さん大募集】

noteでこの企画の募集をされています。(11月28日現在、いったん募集締め切り中です)
【※募集締切済み】全国の書店を巡って本を買う企画をYouTubeで始めます!

本書が大賞に選ばれた理由(わけ)~主催・書店員より

近年、書店の数がどんどん減り、毎年右肩下がりの書籍売上のグラフを見せられ、若者の本離れが盛んに喧伝されるなか、書店員として本の魅力を訴えつづけることに自信をなくしかけていました。 そんなときに本書と出会い、けっして本の魅力が減っているわけではなく、社会のなりたちが読書の機会をすり減らしているという側面を知って、とても勇気付けられました。

丸善ジュンク堂書店
営業企画部 部長  大内 達也

この本のタイトルを初めて目にした時「グサッ」ときた。学生時代は四六時中本を読んでいたのに、本が好きで、本を読みたくて書店で働いているのに、朝から晩まで働いて、休日をダラダラ過ごしていたら、気づけば全然本を読めていない。 「これではいかん」と姿勢を正して、今まで何度読書に向き直ってきたことか。
私を悩ます、本が読めなくなる現象の「なぜ」を追求してくれた一冊。「書店員が選ぶノンフィクション大賞」でこの本が多くの書店員からの支持を得て大賞に選ばれたということは、私と同じく悩んでいる書店員も多いんだろうな。

丸善ジュンク堂書店
仕入販売部  川合 雄高

「書店員が選ぶノンフィクション大賞」は、2025年に3回目を迎えます。丸善ジュンク堂書店では、「書店員が選ぶノンフィクション大賞2025年ノミネート作品フェア」を2025年9月1日~9月30日に全店で開催予定です。ご期待ください。

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