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第12回ハヤカワSFコンテスト

祝!ジュンク堂書店現役書店員 大賞受賞

2024年8月30日、第12回ハヤカワSFコンテストの最終選考会が行われ、大賞2作品、優秀賞1作品が発表されました。大賞のうちの一作『羊式型人間模擬機』の作者、犬怪寅日子さんは、なんとジュンク堂書店 藤沢店に勤務する現役書店員なのです。2023年に当時丸善 仙台アエル店に所属していた佐藤厚志さんが『荒地の家族』で第168回芥川賞を受賞したとき以来のビッグニュースです。おめでとうございます。

本特集では、2025年1月23日に執り行われた贈賞式での犬怪寅日子さんの受賞スピーチを収録(抜粋)し、本人への受賞インタビューを掲載いたしました。 <苦節20年>言葉では聞いたことがあるようなフレーズですが、本当にこんなことがあるのか、というような驚きのエピソードが飛び出し、この記事から溢れて零れ落ちそうになるくらいの喜びをお聞かせいただき、感慨もひとしおでありました。

また、記事後半では犬怪寅日子さんならではのオススメ本を集めた「犬怪寅日子書店」フェアの情報を公開しております。気になった方はぜひ手に取ってみてください。

※著者のシフトや個人情報に関するお問い合わせはご遠慮くださいませ。

羊式型人間模擬機
羊式型人間模擬機

第12回ハヤカワSFコンテスト 大賞受賞作

羊式型人間模擬機

    犬怪 寅日子

/

早川書房

/

¥1,600

(本体価格)

男性が死の間際に「御羊」に変身する一族に仕える「わたくし」はその肉を捌き血族に食べさせることを生業とするアンドロイド。ついに大旦那が御羊になったある日、「わたくし」は儀式の準備を進めるが、一族の者たちは「御羊」に対して複雑な思いを抱いていた
商品詳細

いつ死んでもおかしくない年齢になったぼくは、この作品から生きる力をもらった気分になった。

神林長平(作家)

貪り読み、気づけば涙を流していた。
圧倒的な愛、呪縛、愛。好きすぎました。

一穂ミチ(作家)

なんて恐ろしく奇妙であたたかな物語だろう。さまざまな親愛のかたちに彩られた、一族の濃密な歴史にくらくらしました。

ジュンク堂書店 藤沢店・鈴木沙織

ものすごい人間の罪深さ、尊厳を描いていて、人間の根幹にふれている。傑作だ。

ジュンク堂書店 滋賀草津店・山中真理

登場人物全員に惹かれました。この読書体験そのものがSFみたいだ!

丸善 高島屋大阪店・宮﨑優花

一読しただけで目の前に世界が広がった。すごいものを書いてしまったね!
本当にすごい!

ジュンク堂書店 藤沢店・小山千絵

贈賞式レポート

2025年1月23日(木)、第12回ハヤカワSFコンテストの贈賞式が早川書房本社にて行われ、大賞を受賞したカスガ氏、犬怪寅日子氏、優秀賞を受賞したカリベユウキ氏が登壇した。最終選考委員の小川一水氏、神林長平氏、菅浩江氏も会場に駆け付けた(東浩紀選考委員は欠席)。

神林氏は講評で、1979年に自身が第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作を受賞しデビューした際のエピソードを振りかえりつつ、「これからも書き続けてください」と受賞者3名に激励の言葉をおくった。

大賞のカスガ『コミケへの聖歌』、犬怪寅日子『羊式型人間模擬機』は好評発売中。優秀賞のカリベユウキ『マイ・ゴーストリー・フレンド』は2月19日(水)発売。

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大賞

コミケへの聖歌

カスガ / 早川書房 / 1,980 円(税込)

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 優秀賞

マイ・ゴーストリー・フレンド

カリベ ユウキ / 早川書房 / 2,310 円(税込)

犬怪寅日子さん受賞スピーチ(抜粋)

私は高校一年の冬頃から、出版社の小説の新人賞を取ることだけを考えて生きてきました。まわりの人たちが大学に行ったり、就職をしたり、結婚したり、いろんなことをしているあいだ、ずっと小説を書いて、落ちて、ということを繰り返して、ずっと同じところにいて、でも私は、新人賞を取る以外に、もう人生で選択できることがなかったので、ただ書き続けていました。

時間が経てば経つほど、書いている時以外、なにか悪いことしているような気がしていて、バイトをしているときも、友達と遊んでいるときも、書かなきゃという気持ちが常にあって、実際に、どんな状態のときも、毎日何かを書いていたのですが、それは書いている時以外、何者でもないまま生きているのがつらくて、苦しくて、恐ろしかったからです。

けれどあの日、大賞を受賞したという電話がかかってきて、その時は、ついに現実と妄想の区別がつかなくなったのか、と疑っていたのですが、そのあとにちゃんと発表があって、それでたくさんの人がお祝いしてくれて、本当に新人賞を取ったんだな、とわかりました。

その瞬間から、毎日がずっと嬉しくて楽しくて、つらかった期間のことが、今は、ほとんど思い出せません。私はもう書くことが仕事になったので、本を読んでもいいし、お散歩をしてもいいし、お腹いっぱいになったらちょっと横になってもいいし、何をしてもいいということが、嬉しくて楽しくて。これまでは嬉しいとか楽しいとかいうことを、書いているときにしか感じられなかったのですが、それが今はもう毎日で……。

その感覚が私にはすごく懐かしくて、思い返せば、新人賞を取ると決める前、つまり、何者でなくてもただ生きていることが許されていた時代、私は、こんな風に生きるということが好きだったんだと思います。書き始めた当初は、こういう気持ちを誰かに伝えたくて、文章を書いていたんじゃないかな、と賞を頂いて改めて気がつきました。

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△ 正賞のモノリス型トロフィーを持つ犬怪寅日子さん

ハヤカワSFコンテストとは

早川書房はつねにSFのジャンルをリードし、21世紀に入っても、伊藤計劃、円城塔、冲方丁、小川一水、小川哲など新世代の作家を陸続と紹介し、高い評価を得てきました。いまやその活動は日本国内にとどまらず、日本SFの世界への紹介、さまざまなメディアミックス展開を「ハヤカワSF Project」として推し進めています。そのプロジェクトの一環として、世界に通用する新たな才能の発掘と、その作品の全世界への発信を目的とした新人賞が「ハヤカワSFコンテスト」です。中篇から長篇までを対象とし、長さにかかわらずもっとも優れた作品に大賞を与え、受賞作品は早川書房より単行本及び電子書籍で刊行します。さらに、趣旨に賛同する企業の協力を得て、映画、ゲーム、アニメーションなど多角的なメディアミックス展開を目指します。

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